李白の代表作の一つ「早に白帝城を発つ」を使って漢詩の重要な要素である韻について紹介いたします。
漢詩については高校の古典で習ったでしょうが、なんとなくという感じではないでしょうか。漢詩についての創作に必要な知識を順番に紹介いたします。
李白の名詩「早発白帝城」について解説します
李白の名詩は次のものです。読み方と訳をつけておきます。
早発白帝城 早(つと)に白帝城を発す
朝辞白帝彩雲間 朝(あした)白帝を辞す彩雲の間、
千里江陵一日還 千里の江陵一日にして還る。
両岸猿声啼不住 両岸の猿声啼いて住(尽)きず、
軽舟已過万重山 軽舟已に過ぎる万重の山。
訳はこんな感じとなります。
朝早く白帝城を出発する
朝に彩雲の間にある白帝城に別れを告げる、
千里先の江陵は一日で帰ることができる。
両岸には猿の声が啼き止まない、
軽い船は既に幾つにも重なっている山を過ぎた。
李白の名詩「早発白帝城」の鑑賞と説明
これだけであれば、ああそうかということになりますが、ここから詩の中身を鑑賞していきましょう。この詩は七言絶句という形式です。一行に七文字が並んでいますね。
これで七言。これが4行あるのが絶句という形式です。全部で28文字から成る詩の形式です。
ただこれだけでは七言絶句にはなりません。その他にも細かい約束事がありますが、おいおい解説していきます。
詩を鑑賞するにはどうしたらよいかということを述べたいと思います。詩はたったの28文字です読んでしまえば1分もかからない間に読んでしまいます。
まして、読みと訳を読めば内容もわかってしまいます。でも、これは解説分の読み方です。詩は味わうもので、中から知識を吸収するものではないと考えます。
そういう意味で、この一行七語をじっと見ていくことから始まります。人によっては何度も音読する方法もあるでしょう。そうするといろいろなことに気が付きます。
一行目です。七言の形式は四言+三言というのが基本です。この変形として二言+二言+三言というのもあります。
この四言にある白帝の白と彩雲の色の対比に気が付きませんか。
同じように二行目も千里と一日を対比させていますね。
四行目には軽舟と万重山で重い軽いの対比がありますね。
二行目の一日還と四行目の万重山も対比の構造です。
一、二、四行目は風景を読み込み視覚に訴えていますが、三行目に猿声を入れて聴覚を入れて転句を形成しています。
どうです、ざっとこのようなことに気が付いて味わうことが期待されているのです。ここまで記載した対比についてもこのような効果を盛り込んで作ってあるのです。
ここまでくると詩を鑑賞したことになるのかもしれません。
李白の名詩「早発白帝城」による韻の説明
お待たせしました、韻について説明します。七言絶句の決まり事として、韻を踏むことが期待されています。一行目の間、二行目の還、四行目の山です。
これを漢和辞典で引くと、(平)刪というしるしがあると思います。又は刪の字を四角く括って左下に印がついている記号がついているでしょう。
この(平)又は左下についた印が平音を示す記号です。よく「平仄を合わせる。」という説明がありますが、漢字には平音と仄音に分かれていて、この平音、仄音の並び方に一定の法則をつけることです。
平音には21種類の分類があり。刪はそのうちの一つです。ではどんな音だったのかというと正確にはわかりません。ただ推測はできます。
現在でも中国語には四声と言って第一声は高いまま、第二声は低いところから高いところに上げるもの、第三声は低く最後に少し上げる、第四世は高いところから低いところに下げる。
このどうやら第一声、第二声にあたるものと考えられています。ちなみに現代中国語で、間はjianで第一声、還huanで第二声、山はshanで第一声です。
絶句で言えば、一行目、二行目、四行目の末尾の字が同じグループの韻字でそろっていることが条件となります。
たまには、第一句が韻を踏んでいないものもありますが、「踏み落とし」と言って第一句と第二句が対句の場合の特例と考えてください。
李白の名詩「早発白帝城」を使って漢詩の韻について知るのまとめ
漢詩作成の手ほどきと詩の鑑賞を備えた入門講座を開こうと思いました。今回は李白の名詩を使って漢詩に必要な韻について解説しました。
漢詩作成のためには、たえず古今の詩に親しむ必要があります。それと漢和辞典を引きなれることが必要です。
最近では電子辞書のおかげで、漢和辞典もかなり引きやすくなりましたが、残念なことに気を付けないと、平仄が記載されていないものもあります。
これも時代の流れなのでしょうか。