詩経の代表的な詩「桃夭」を解説します

中国の漢詩

中国最古の詩集と言われている「詩経」の中で一番有名な「桃夭」と言う詩を解説します。とてもほのぼのとする詩ですので楽しんでみてください。

詩経の桃夭の本文と読み

桃夭

桃之夭夭 灼灼其華  桃の夭夭(ようよう)たる灼灼(しゃくしゃく)たり其の華

之子于帰 宜其室家  之の子于(ここ)に帰(とつ)ぐ其の室家(しっか)に宜(よろ)しからん

桃之夭夭 有蕡其実  桃の夭夭たる蕡(ふん)たる其の実有り

之子于帰 宜其家室  之の子于に帰ぐ其の家室に宜しからん

桃之夭夭 其葉蓁蓁  桃の夭夭たる其の葉蓁蓁(しんしん)たり

之子于帰 宜其家人  之の子于に帰ぐ其の家人に宜よろしからん

詩経の桃夭の意味と解説

詩そのものの現代語訳は次の通りでしょう。

みずみずしい桃よ花はなやかに

夭夭は美しく勢いがある様子を示しています。また灼灼も光り輝くように美しいことですからこれだけわかれば簡単ですよね。

娘さんはお嫁に行くきっと嫁ぎ先の良いお嫁さんになるだろう

于はここにと読みますが、具体的な場所を示しているわけではありません。帰は嫁ぐことですので、これも簡単ですね。

みずみずしい桃よ実はずっしりと

蕡は実がずっしりと重たいことです。これもこの字さえわかれば簡単ですよね。

娘さんはお嫁に行くきっと嫁ぎ先の良いお嫁さんになるだろう

みずみずしい桃よ葉はふさふさと

蓁蓁は葉がふさふさしている様子です。これもこの字の意味さえ分かれば簡単ですね。

娘さんはお嫁にいくきっと嫁ぎ先の良いお嫁さんになるだろう

このようにこの詩はとても簡単な内容です。読んだだけで分かりますが桃はお嫁さんに例えられていますね。結婚するときのとても幸福感に満たされた穏やかな詩です。それだけに、これからの幸せを強く願うための詩であると言われています。

桃夭の構成と韻、詩経について

この詩は我々が普段親しんでいる七言絶句とか五言律詩といういわゆる近代詩というジャンルのものとは違います。何しろ李白、杜甫の時代よりも1000年以上前のものですから、近代詩の様式が整う前です。

従って、まだ五言とか七言が取り入れられる前の四言詩になるわけです。中国語は4字で書くと座りが良いと言われています。そんなことから素朴な感覚では四言になったのでしょう。

桃之夭夭 灼灼其 之子于帰 宜其室

桃之夭夭 有蕡其 之子于帰 宜其家

桃之夭夭 其葉蓁 之子于帰 宜其家

こんな頃にはまだ韻なんてないだろうと思いがちですが、詩ですからそれなりに詠んだ時の音は大切にしていのです。しかも近代詩で使用する平水韻を使ってもそれなりに韻を踏んでいることがわかります。

例えば、上の1行目の華と家は平水韻では麻という分類の平字となっています。

2行目の実と室は質という分類の入声の仄字となっています。

3行目の蓁と人は真という分類の平字となっているのです。

このために其葉の位置を変えたり、工夫しているのです。

この詩が収められている詩経について簡単に説明しておきます。詩経は中国最古の歌謡集と言われています。およそ紀元前600年ぐらいに出来上がったと言われています。一説には孔子が伝わっていた歌謡をまとめたものと言われているのです。

詩経には300もの詩が収められていますが、風(ふう)、雅(が)、頌(しょう)という三つの分類がされています。風は各地の民間歌謡、雅は諸侯の祭典、儀式に用いられた歌謡、頌は王室が先祖を祀るためのものとされています。この「桃夭」は風に属すものです。

また、表現の形態から賦(ふ)、比(ひ)、興(きょう)の三つの分類があり、賦は直叙、比は比喩、興は連想によって主題を見出すものです。この「桃夭」は興に属するものです。

詩経の代表的な詩「桃夭」のまとめ

詩経の中で最も愛されている「桃夭」を取り上げてみました。とてもシンプルですがのびのびとした詩ですよね。この精神は同じように奈良時代の万葉集にも受け継がれたと思うのですが、いかがでしょうか。

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