王維の五言律詩の名作「過高積寺」を解説します

中国の漢詩

王維の五言律詩の名作「過高積寺」を解説します。仏教に深く帰依していた王維の静かな心境を描いた名作です。読んでいるだけで心が静かになります。

王維の「過高積寺」の本文と読み方

王維の「過高積寺」の本文と読み方は次の通りです。

過香積寺    香積寺(こうしゃくじ)に過(よぎ)る

不知香積寺  香積寺を知らず、

数里入雲峰  数里 雲峰(うんぽう)に入る。

古木無人徑  古木(こぼく) 人徑(じんけい)無く、

深山何処鐘  深山(しんざん) 何処(いずれのところ)の鐘ぞ。

泉声咽危石  泉声(せんせい) 危石(きせき)に咽(むせ)び、

日色冷青松  日色(にっしょく) 青松(せいしょう)に冷ややかなり。

薄暮空潭曲  薄暮(はくぼ) 空潭(くうたん)の曲、

安禅制毒龍  安禅(あんぜん) 毒龍を制す。

王維の「過高積寺」の解説

王維の「過香積寺」の意味は次のように考えます。あまり紛らわしいところはないでしょう。

過高積寺の意味

題の高積寺に過るは高積寺に立ち寄ることです。

高積寺は大体の場所は分かるがどこにあるのか知らないが、雲がかかっている山中に数里入っていく。

人が踏み固めた道がなくなり枯れた木があるだけだ、深い山の中から聞こえる鐘はどこから来るのだろう。

泉の湧き出る音は高い崖に反射してむせび泣くよう、日の光も青々とした松にあたって冷ややかに感じる。

夕暮れ時に人気のいない淵のほとりで、安らかに座禅をすれば煩悩に囚われた佞心を押さえることができる。

過高積寺の平仄と形式

次に平仄と押韻を見ていきましょう。

不知香積寺  仄平 平仄仄
数里入雲峰  仄仄 仄平鐘

古木無人徑  仄仄 平平仄

深山何処鐘  平平 平仄鐘

泉声咽危石  平平 仄平仄

日色冷青松  仄仄 仄平鐘

薄暮空潭曲  仄仄 平平仄

安禅制毒龍  平平 仄仄鐘

韻は2句、4句、6句、8句の末尾の峰、鐘、松、龍になります。二四不同は一部破られていますが、大体揃っています。五言律詩ということになりますが、このためには3句、4句の頷聯と5句、6句の頸聯が対句になっている必要があります。

まずは頷聯から。古木と深山、無人徑と何処鐘が対句なのですが、無人+径と何処+鐘というのが理想なのですが、伝統的には無人径は無+人径と読んでいるようです。

頸聯は泉声と日色、咽+危石と冷+青松が対句になっています。こちらは全く問題がないでしょう。

作者の王維とは

唐の詩人で701生まれで761年没と言われています。わずか21歳で進士に合格し、順調に出世を重ねてきました。詩の他にも絵画にも優れていたと言われています。

また深く仏教に帰依していたと言われています。安史の乱のとき反乱軍側の官位をもらったとして危機に陥りますが、周囲のとりなしで官を下げただけでとどまりました。

王維の五言律詩の名作「過高積寺」のまとめ

王維の「過高積寺」の紹介をしました。王維は自然派詩人として有名ですが、合わせて深く仏教に帰依していることもあり、非常にさわやかで、清らかな詩が多いですね。このため日本でも愛好者が多いと言われています。

話題の高積寺は西安に現存しています。住所は中華人民共和国陝西省西安市長安区郭杜街道神禾原です。この寺の由来は、維摩経の香積佛品第十に「 天竺に衆香の国あり、仏の名は香積なり 」からきているようです。

王維自ら維摩詰と称していることから、この寺には思い入れがあったのでしょう。

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