漢詩の韻を楽しむために知っておきたい平仄の基本

漢字と漢詩規則

漢詩と聞くと、韻(いん)のルールが複雑でとか。平仄(平仄)というものがあるのでしょうとか。いっぱいルールがあってわからないということになります。

そこで、本記事では、漢詩を味わう、更に漢詩を作る際の押韻のルールなどを解説していきます。題材に利用する漢詩もなるべく誰でも知っているものを取り上げたいと思います。

平仄とは何か?漢字の音の高低による分類1

漢字の読み方には様々な種類がありますが、これを一定の分類で分けたものです。基本的な分け方として、現代中国語でも四声というものがありますが、ご承知でしょうか。

これは漢字の音の高低によって分類するものです。

これは四つの分類があって、第一声は高く伸ばす音です。第二声は低いところから高いところ持ち上げる音です。第三声は低い音で最後に少し持ち上げる音、第四声は高いところから低いところに下げる音です。

現代中国語ではこのように4種類の分類がされています。このうち、第一声と第二声がいわゆる平音(ひょうおん)、第三声と第四声が仄音(そくおん)に相当すると言われています。

ものすごく簡単に言えば、平音は高い音、仄音は低い音と考える手もあります。

もちろん、漢詩の世界では基本的に平水韻と言って元の時代に完成された分類を使っていますし、現代中国語とは発音も異なりますので、正確に表現していません。

そのように平音と仄音という二つの分類があるということをご理解ください。

漢和辞典で平仄を調べる方法

この平仄はどのように調べるかというと、漢和辞典を使います。最近の漢和辞典でも簡易版では平仄の区別が載っていないものがありますので注意してください。

個々の漢字の解説の最初のところに「平」とか「仄」とか書いてあれば、平字、仄字であることを示しています。又は、古い辞典ですと漢字を四角く囲んであり、右上に切り欠きがあれば平字、その他の部分にあれば仄字という分類の者もあります。

これは、基本1つの文字に決めてありますが、中には用法、動詞の場合とか名詞の場合とかで違うものもありますし、両用しているものもあります。

江南春を例に平仄と韻を分析する

江南春 杜牧

千里鶯啼緑映紅 水村山郭酒旗風

南朝四百八十寺 多少楼台煙雨中

例えばこの有名な江南春ですが、「江」を漢和辞典で引くと(平)江「南」は(平)覃「春」は(平)真、この(平)が平音を示すものです。またこの他にも(上)、(去)、(入)と書いてあるのは仄音を示すものです。

韻とは何か?平音の30種類の分類2

最初に漢字には平音、仄音の分類があることを学びました。

次に平音の分類を解説します。漢字全体を二分類にしただけですので、膨大な量の字があります。この平字を上平音、下平音に分けて、全体を30分類したのが韻と言われているものです。

本当は仄音ももっとすごい数があるのですが、現代では仄音は一本で取り扱いますので、分類はもっと詳しくなってからにしてください。

先ほど漢和辞典で引いた「江」は平音のうちの江という分類に属しています。音ではコウと呼びますので(平)江の分類にあるのが理解できますよね。

同じように、「南」は音ではナンですが、平音の覃の分類に属します。タン、ドンと呼ぶそうですから近いでしょう。

「春」は平音のうちの「真」という分類に属しています。日本語の音でシュンですからなんとなくシンに近いでしょう。

江南春の最初の一句を見てみましょう。「千里鶯啼緑映紅」これを漢和辞典で調べていくのです。最近は電子辞書もありますので調べるのが早くなりました。

千は平字の先、里は仄音(上)、鶯は平音の庚、啼は平音の斉、緑は仄音(入)、映は仄音(去)、紅は平音の東です。

通常平字は〇、仄字は●で表すと視覚的にとらえやすいので多くの方が取り入れています。これですと、〇●〇〇●●〇ということになります。もしくは、脚韻をはっきりさせるとすると、〇●〇〇●●東と書きます。

韻のルールとは何か?絶句と律詩の韻律

この最後に書いた脚韻については、一句七言で四句ある、七言絶句の場合一句目、二句目、四句目を同じ韻の字を使います。

ここに挙げた詩では、紅、風、暁が同じ平字の東になっています。では、三句目はどうかというと三句目の寺は仄字になっています。

これが、一句五言の五言絶句の場合は二句目と四句目が韻を踏むこととなっています。

八句ある律詩の場合は二句目、四句目、六句目、八句目が韻を踏むことになっています。

二六対、二四不同とは何か?

ここで一つのルールがあります。二六対と二四不同というものです。

これは七言の時の決まりとなっています。二六対は二字目と六字目は平仄が同じという規則です。これですと●●ですので同じことがわかります。

二四不同は二字目と四字目が平仄を変えるということです。これを表すと●〇ですのでこれも適合していることがわかるでしょう。

二句目に移ります。「水村山郭酒旗風」です。

水は仄字(上)、村は平字の元、山は平字の刪、郭は仄字(入)、酒は仄字(上)、旗は平字の支、風は平字の東です。これを記号であらわすと●〇〇●●〇東となります。

これも二字目、四字目、六字目は〇●〇となっていて、二六対と二四不同を満足していることがわかります。

反法、粘法とは何か?

次にこの二字目、四字目、六字目を一句目と二句目で比較すると〇から●へ、●から〇ヘ、〇から●へとひっくり返っているのがわかります。これを反法と言います。

また、このようにひっくり返らないのを粘法と言います。通常絶句の場合、一句目から二句目には反法、二句目から三句目には粘法、三句目から四句目を反法でつなぐのが普通です。

まとめ:漢詩の韻のルールを理解して漢詩を味わおう

漢詩の韻のルールの基本的なことを解説いたしました。この程度を理解しておけば漢詩も親しみやすくなるのではないでしょうか。

あとは、漢和辞典に親しんで、それぞれの字が平字なのか、仄字なのか、また、平字ならどんな韻なのかを調べていくことで慣れてくるものです。

もっと簡単にと言えば、いろいろな方が、解説を上げておりますので、それを見ていく方法もあります。

平仄便覧とかいう本には様々な漢字の平仄が載っていますので、これで調べる手もあると思います。ただ、本が古いので果たして入手できるかどうかがわかりません。

今では、電子辞書の漢和辞典で引くのが一番早いような気がします。ただし、辞書によっては平仄の載っていないものがありますので、必ずそこはチェックしておいてください。

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