一刻値千金の出典は?蘇軾の有名な詩「春夜」を使った漢詩入門

中国の漢詩

春の宵の情景をうたった滝廉太郎の有名な「春」に「一刻値千金」のフレーズが出ています。これは北宋の蘇軾(そしょく)の「春夜」に由来するものです。
今回はこの詩を題材に漢詩の構成を説明いたします。

一刻値千金の出てくる蘇軾の有名な漢詩「春夜」とは

蘇軾の春夜の全体と読み方を説明します。

詩の全体は

春夜
春宵一刻値千金
花有清香月有陰
歌管楼台声寂寂
鞦韆院落夜沈沈

読み方と意味は

春夜(しゅんや)

春宵(しゅんしょう:春の夜です日本の宵ではありません)一刻(いっこく:わずかな時間)値(あたい)千金(とても高価な価値のこと)

花に清香(せいこう:清らかな香り)有り、月に陰(かげ)あり

歌管(かかん:歌や管弦でにぎわった)楼台(ろうだい:高楼、宴席)声寂寂(こえせきせき:声もいまはひっそりしている)

鞦韆(しゅうせん:ブランコのこと)院落(いんらく:中庭のこと)夜沈沈(よるちんちん:夜が深々と更けていく)

春の夜の昼とか宵のにぎやかな宴席や中庭での遊びも終わって、夜が深々と更けていく様子があらわされています。
ブランコが描かれているのが面白いですね、それでもこれは相当古く紀元前から中国に伝わってきたようです。
主に若い娘のあそびのようで華やかさと夜の静けさの対比が面白いですね。

一刻値千金の出てくる「春夜」を書いた蘇軾とはどんな人でしょう

北宋の時代の人です1036年~1101年と言われています。学問で有名な家系で22歳で進士に及第して官途につきます。
実際の官歴ではあまり恵まれておりません。
その頃、王安石の推進する新法と対立して、30代半ばで地方に行ったり、40代では投獄されたり、50代でも流されたり、60代ではついに海南島まで追放されてしまいます。
60代半ばで許されて帰京するときに亡くなっています。

変わったところでは中国料理のトンボ―ロー(東坡肉)の考案者と言われています。彼の号の東坡居士からつけられています。

中国の漢詩一覧はこちら

一刻値千金の出てくる「春夜」の詩の構成はどのようになっているでしょう

これは、もうお分かりかと思いますが、典型的な七言絶句です。この詩形は初心者が分かり易い形ですので、理解しておきましょう。

春宵一刻値千金 4句+3句の構成はお分かりですね。
花有清香月有陰 「花に清香あり」と「月に陰有り」がともに同じ構造で、一句の中で対句をなしています。いわゆる句中対というテクニックです。

歌管楼台声寂寂
鞦韆院落夜沈沈 これも「歌管」と「鞦韆」「楼台」と「院落」がともに場所を示しています。また「声寂寂」と「夜沈沈」が対をなしています。きれいな対句です。

この詩の構成を見ていくと、通常の絶句とは少し違うことがわかります。
普通の絶句では起承転結で最後に結論を述べるとかまとめるのですが、この詩については、第一句目で全体の様子を顕しています。
そして二句目からはその説明を述べていきます。二句目はその時の嗅覚、視覚に感じた情景を示しています。
三句からあとは、少し前の情景との対比を示しており、三句目は聴覚の対比、四句目は視覚の対比を説明しています。とても優れた詩ですよね。

中国の漢詩一覧はこちら

一刻値千金の出典は?蘇軾の有名な詩「春夜」を使った漢詩入門のまとめ

日本で愛唱されている滝廉太郎の花に出てくる一刻値千金の出典である蘇軾の春夜を題材に、七言絶句の構成、起承転結だけではない構成があることもお分かりかと思います。
でも実際に作ろうと思うと、これはなかなか難しいものです。
また、その説明の仕方が、視覚、嗅覚、聴覚に及びされに昼との対比で描いていてとても素敵ですよね。
さらに、対句、句中対などが配されて、本当に味わいのある詩でした。
今回は内容が豊富だったので、韻とか平仄まで説明できなかったのが残念ですが、興味がある方は調べていただくと良い勉強になると思います。

平仄のある漢和辞典で丁寧に調べていけばそれなりに勉強になります。
漢詩の世界では「字源」の評判が良いのですが、高いし重いので「新字源」を使っている方が多いようです。
でも私も実は別の漢和辞典を使っております。また、電子辞書でも平仄が出てくるのもがあるので、こちらの方が使いやすいかもしれません。私も電子辞書の「漢字源」を使っています。

中国の漢詩一覧はこちら

タイトルとURLをコピーしました