王翰の有名な詩「涼州詞」を使って漢詩の平仄を解説します

中国の漢詩

漢詩の中でもとても有名な王翰(おうかん)の詩「涼州詞(りょうしゅうし)」を使って、平仄(ひょうそく)についてわかり易く解説します。

この詩は涼州詞と言って辺境のリズムを使って読まれた詩ですがそのリズムは今や伝わっておりません。

詩の情景もとても美しいのですが、内容についてはどきりとさせられ、現代に通じるものがあります。

王翰の詩「涼州詞(りょうしゅうし)」はどのような詩でしょう

詩のジャンルとしては、辺境に配備された兵士の状況を詠んだ辺塞詩の分類にあたるものです。

本文は

涼州詞

葡萄美酒夜光杯

欲飲琵琶馬上催

酔臥沙場君莫笑

古来征戦幾人回

読み方と意味は

葡萄(ぶどう)の美酒(今でいえば西域ですから。ワインのことですね。)、夜光(やこう)の杯(ガラス製もっと高級なら玉の盃ですね)

飲まんと欲すれば、琵琶馬上に催ほす(馬上では誰かが琵琶を奏でている。)

酔いて沙場(さじょう:砂漠です。西の辺境ですから。)に臥す、君笑うことなかれ(笑ってくれるな)

古来(昔から)征戦、幾人かかえる(いったい何人の人が無事に帰ったことだろう。)

前半二句は異国情緒あふれる情景です。戦いを明日に控えて、恐怖を忘れるためか酒盛りを始めます。

この習慣は古今東西いずれも似たようなものです。先の大戦でも大体こんな様子であったといわれています。
後半に主からがこの詩の真骨頂です。明日をも知れない身ですからやはり酔いが進んでしまいます。あちこちで倒れていくことでしょう。

そして結句が素晴らしい反戦歌になっています。そうですこんな過酷な戦いの中でほとんどの兵は帰ることができないのです。

「涼州詞(りょうしゅうし)」を作った王翰ような人でしょう

辺境の詩で有名ですが、特に辺境に行ったわけではなさそうです。それにしてもよくできた詩です。

睿宗の景雲2年(711年)進士に及第。

張説に認められて駕部員外郎に任ぜられたが、説の失脚とともに汝州刺史、次いで仙州別駕、道州司馬に流されて死去。(687~726)

中国の漢詩一覧はこちら

王翰の有名な詩「涼州詞(りょうしゅうし)」を使って漢詩の平仄を解説します

お待たせしました。この詩の平仄(ひょうそく)と韻については次の通りです。

葡萄美酒夜光杯 ○○●● ●○灰

欲飲琵琶馬上催 ●●○○ ●●灰

酔臥沙場君莫笑 ●●○○ ○●●

古来征戦幾人回 ●○○● ●○灰

このうち右側にある○は平音、●は仄音、灰と書いてあるのは平音のうち「灰」の韻を踏んでいることを示しています。

この平音(ひょうおん)、仄音(そくおん)についても説明しなければならないようです。

現代の中国語でも四声と言って漢字一つ一つに発音の高低が決まっています。これは知っている人も多いかと思います。

第一声は高く伸ばす音。第二声は低いところから高く終わる音。第三声は低く最後に少し上げる音。第四声は高いところから低く終わる音です。

漢詩の書かれた時代もそれぞれの字の音を区分しております。本当の発音は残っていないので正確にはわかりません。

平声はまっすぐ伸ばす音、仄音の中には上声と言って上げる音、去声という下げる音、入声という詰まったような音と言われています。

これらの平音と仄音を詩の中で一定のリズムに配置することが求められているのです。そのためのルールがありこれに従う必要があるのです。

「平仄を合わせる。」というのはこういうことです。

漢和辞典で調べると比較的新しい辞典では、平音は(平)、仄音は(上)、(去)、(入)と書いてあります

伝統的には、漢字を四角く囲んで、左下に印があれば平音、左上に印があれば上声、右上なら去声、右下なら入声を示しています。

その時代の中国人であれば平音と仄音はわかるのですが、現代中国人には想像はできますが、確かではありません。

日本人の場合、音訓の音に古い時代の発音が残っていますので、現代中国人と同じように想像はできますが、確実ではありません。

一つ一つ辞書を引かなければ身につかないのです。それでも戦前の知識人はかなりの程度この違いを学習していたようです。平仄の違いはこの程度です。

漢和辞典で漢字を引くときにはこの字が平音か仄音か見るようにしてください。少しややこしいことを加えますと、一つの漢字でも使い方によって平音で読むものと仄音で読むものがあります。

中国の漢詩一覧はこちら

王翰の有名な詩「涼州詞」を使って漢詩の平仄を解説しますのまとめ

今回は七言絶句の解説は省略し、漢詩の平仄そのものの説明を重点的にしてみました。ついわかっているだろうと省略してしまうのですが、平仄について理解が進んだなら幸いです。

私も漢詩を作るようになるまで、漢和辞典をまともに引いたことがなかったので、この平仄がどんなものかわかりませんでしたが、習うにしたがって親しみが持てるようになりました。

ぜひ気がついた時に漢和辞典を手に取ってみてください。

中国の漢詩一覧はこちら

タイトルとURLをコピーしました