王維の「元二の安西に使いするを送る」の解説と使い方

中国の漢詩

王維の「元二の安西に使いするを送る」を紹介します。この詩は友人がはるか彼方に仕事で出かける時の送別の詩として有名です。

若さ溢れる生き生きとした表現と友人をおもう気持ちが精一杯表現されている名作です。

王維の「元二の安西に使いするを送る」の読み方と意味は

送元二使安西 王維
渭城朝雨潤輕塵
客舎青青柳色新
勧君更盡一杯酒
西出陽關無故人

「元二の安西に使いするを送る」の読み方は

元二の安西に使いするを送る 王維

渭城(いじょう)の朝雨(ちょうう)軽塵を潤し

客舎(かくしゃ)青青(せいせい)柳色新たなり。

君に勧む更に尽くせ一杯の酒

西の方陽関を出れば故人(こじん)無からん。

「元二の安西に使いするを送る」の内容は

どうでしょうね。この読みだけで大体わかるでしょう。もう少し詳しく語句などを説明しておきます。

元二は排行(はいこう)と言って、元氏一族の同世代で何番目に生まれたかを数字で示すものです。

従って、この場合は元さんの従兄弟を含めて、二番目に生まれた人が、新疆ウイグル地区の安西都護府に用事があって出かけるのを送るという意味です。

何しろ辺境の要塞ですから、大変な旅行になるはずです。それに危険ですので、必ずしも無事に帰ってこれるわけではありません。

渭城(いじょう)は長安から北西に渭水を挟んだ対岸にある町。唐の時代北西に向かう旅人にはここまで見送って、その晩そこで宴会を行い、朝に出発するのが習わしだったそうです。

渭城と言っても日本の城とは違い町の意味です。昔から町は塀で囲われていましたので、このように呼んでいます。

朝に軽く雨が降ったのでしょう、埃もすっかり落ち着き、すがすがしい朝の情景ですね。

客舎は旅館のことです。夜明けの青白い光と雨に濡れた柳の新緑を青々と表現しています。柳色は柳の色が雨に洗われて、また、新緑の季節ですので若葉が茂っているのです。

ここで柳が出てくるのは、柳の音がリュウ留まるの音と一緒であることから、旅人に柳の一枝を送るのが習慣となっていたのです。

後半は風景から対人関係に場面を移します。君に勧める。重ねてもう一杯飲まないかと。

陽関は唐の西の果てと考えられるところです。直線でも1500㎞の距離となります。そこを過ぎてしまえば、故人は知っている人、知りあい、友人はいないのだから、今のうちに飲みたまえと言っているのです。

王維の「元二の安西に使いするを送る」の形式について

単純に考えれば一句七字ですので七言絶句と考えられると思います。しかし単純にこれだけで決めつけないで、一応調べてみましょう。平仄と韻字を調べると次のようになります。

送元二使安西 王維
渭城朝雨潤輕塵 仄平平仄仄平真
客舎青青柳色新 仄仄平平仄仄真
勧君更盡一杯酒 仄平仄仄仄平仄
西出陽關無故人 平仄平平平仄真

この中の「平」は平字、「仄」は仄字、「真」と書いてあるのは「真」という分類の韻を踏んでいるというしるしです。

「送元二使安西」の韻は

一句目(起句)、二句目(承句)、四句目(結句)の末字が「真」で揃っています。ということで韻についてはこれで結構です。

「送元二使安西」の二四不同と二六対

まずは起句から。渭塵 仄真 ですので二字目と四字目は「平」と「仄」で不同です。二字目と六字目は「平」と「平」で同じですよね。従ってこれは条件が成立しています。

次に承句です。新 仄真 二字目、四字目、六字目は「仄」、「平」、「仄」ですのでこれもよろしいですよね。

転句に移ります。酒 仄仄 二字目、四字目、六字目は「平」、「仄」、「平」ですからこれも良いですね。

結句はどうでしょう。西人 平真 これは自分でチェックしてみてください。

「送元二使安西」の反法・粘法

次に反法・粘法の確認に入ります。二字目を横に見ていくと、平→仄→平→仄になっています。同じつながりを粘法、異なるながりを反法と言いますから、順番には反法、反法、反法のつながりになります。

四字目については、仄→平→仄→平ですから、反法、反法、反法です。

六字目は平→仄→平→仄ですから、反法、反法、反法です。

この詩はここのところが少し変わっています。通常は反法→粘法→反法ととることをしているので、厳密に言えばルール破りです。

しかし、なんといっても王維はネイティブですし、ルールよりも感性と内容が重視されるのでしょう。ということで七言絶句ということになります。

王維の「元二の安西に使いするを送る」の使い方

何といってもこの詩は送別の詩としての代表作です。しかも春の季節ですから、送別の時のメッセージにこれをサラッと書いて送るというのも結構かとも思います。

もっと高度に楽しもうとすれば、この中身の地域を入れ替えればそれなりに詩になってきます。盗作はいけないと言われますが、個人的な趣味としてなら許されるでしょうし、何も外向けに発表するわけではないでしょうから。

送元二使安西 王維
渭城朝雨潤輕塵
客舎青青柳色新
勧君更盡一杯酒
西陽關無故人

タイトルは長くなると面倒なので「送○○先生」で良いでしょう。

入れ替えの部分は3か所です。「渭城」は日本でも東京なら宮城、名古屋なら金城等都市名を〇城で著しますので、これを入れ替えればよいのです。1字目は平仄はどちらでもよいので便利です。

次は方向をあらわす「西」ですが、これも1字目になりますので平仄は影響しません。東でも南でも北でも自由に入れられます。

最後の「陽関」は少しややこしくなります。「関」が4字目になりますので、平字になるような字をはめ込む必要があります。もっとも、そこまで厳密にやらなくても、発表するものではないので気楽に地名を入れればよいとする考え方もあります。

王維の「元二の安西に使いするを送る」のまとめ

送別の代表作、王維の「元二の安西に使いするを送る」について解説してみました。送別会シーズンになると思いだす名作です。ぜひ味わってみてください。

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